睡眠時無呼吸症候群(SAS)患者が緑内障になるリスクは健常者の約10倍
気をつけよう睡眠時無呼吸症候群 17. 緑内障
緑内障と睡眠時無呼吸症候群
緑内障は、眼圧上昇や血流低下などが原因となり視神経が障害され、徐々に視野(見える範囲)が狭くなっていく病気です。40歳以上の約20人に1人、70歳以上の約10人に1人が発症していると言われ、日本における失明原因の第1位に挙げられています。
失明につながる他の眼疾患が減少している中で、緑内障は、現在失明患者が増加しており、失明の原因疾患の40%を占める大変恐ろしい病気です。自覚症状がないことが特徴で、眼科で眼底検査を受けないと自身に緑内障があるのか分かりませんが、既に発症しているにもかかわらず病院を受診していない人が9割もいることが知られています。
障害が進行してしまった視神経を元に戻すことはできず、欠損した視野を広げることはできません。しかし、早期に発見して点眼など適切な治療を行えば、進行を食い止めることができ、失明に至らない場合が多くなります。
日本緑内障学会緑内障診療ガイドライン(第5版)には、睡眠時無呼吸症候群(SAS)が危険因子のひとつとして掲載されており、重症な睡眠時無呼吸症候群の緑内障有病率は5.49倍*1という研究結果や、睡眠時無呼吸症候群の患者は健常者と比べて緑内障になるリスクが約10倍高いという研究結果もあります。
緑内障にSASを合併すると、緑内障が重症化しやすいことも知られており、生涯に渡る「みえる」を守るために、SASがある方は眼科検査を、緑内障治療中の方は、SASの検査を受ける意義があります。
睡眠時無呼吸症候群と緑内障の関連についてはまだ研究段階ですが、睡眠習慣が緑内障リスクに影響を及ぼす可能性が示唆*2されています。また、睡眠時無呼吸症候群患者の眼圧は上昇してはいないが、無呼吸から低酸素状態になることで視神経が障害を受ける可能性があることを示唆した報告*3もあります。
発見が難しい緑内障
視野が部分的にかすんでいくのが緑内障ですが、ものを見る時には両目を使ったり目を動かしたりするために、見えない箇所があってもそれに気付きにくく、また眼圧がかなり高くならないと目の痛みや視力低下が生じないために、健診や、眼科を別の理由で受診した際に、眼底検査で偶然に発見されることが多いのです。
眼底検査が緑内障の早期発見につながる最も有効な方法ですが、残念ながら、健診の中ではオプションの検査項目となってしまっています。3年に一度は眼底写真などの検査を受けると良いでしょう。
目の状態のセルフチェックをする方法も出ております。
https://www.eye-frail.jp/checklist/tenken/
東北大学大学院医学系研究科と仙台放送が共同開発した「METEOR BLASTER(メテオブラスター)」は、緑内障の早期発見に寄与するとして、日本における特許も取得したゲームです(特許権 登録番号:第7103744号)。スマートフォンで約5分間シューティングゲームを行うことで視野の状態を簡易的にチェックすることができます。
睡眠時無呼吸症候群の罹患の有無に関わらず、こういったツールも活用しながら、緑内障が多くの人に起こりうる身近な疾患であるという意識を持つことをお勧めします。
- *1 Obstructive sleep apnea/hypopnea syndrome increases glaucoma risk: evidence from a meta-analysis 2015 Jan 15;8(1):297-303. eCollection 2015
- *2 Sun C, et al. BMJ open. 2022;12;e063676.
- *3 Investigative Ophthalmology & Visual Science May 2016, Vol.57, 2824-2830.
関連リンク
睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは