脳梗塞をも引き起こす心房細動
患者の約8割は睡眠時無呼吸症候群(SAS)

気をつけよう睡眠時無呼吸症候群 18. 心房細動

心房細動とは

心房細動とは、リズミカルな心臓の収縮が行えなくなる不整脈の中でもっとも患者数が多いとされている病気です。自覚症状がない場合も多く、2030年には患者数が100万人を超えるとも予想されています。

直接的な主な症状は動悸や息切れ、疲れやすくなるなどですが、脳梗塞を引き起こす主な要因のひとつとされており、そのリスクは健常者の5倍以上とされています。

昨今では、心房細動患者の約8割が睡眠時無呼吸症候群(SAS)を併発しているという報告もあり、睡眠時無呼吸と密接に関係していると言われています。

心房細動の仕組み

心臓は筋肉で出来ている臓器で、上部左右の心房と下部左右の心室の4つの部屋に分かれています。心臓内を微弱な電流が規則正しく流れることで1日に約10万回の収縮と拡張を繰り返し、血液を全身に送るポンプの役目を担っています。

前述の通り、このリズムが何らかの原因で不規則になることを不整脈と言いますが、心房細動は心臓上部の心房で電気信号が乱れることによって1分間の拍動が100回以上となり、ぶるぶると小刻みに痙攣したような状態になることを指します。

主な症状

心房細動が起きると以下のような症状が発生します。

  • 動悸
  • 息切れ
  • めまい
  • 胸の苦しさ
  • 疲れやすさ


しかし、これらの症状を自覚せずに心房細動が起きていることに気付かないケースも非常に多くあります。
そういった場合に危険なのが、心房細動を起因とした血栓の発生による脳梗塞です。

心房細動では血液の流れが悪くなるため、心臓内の血液が滞留(うっ血)し血栓が出来やすくなります。そして、形成された血栓が脳血管に詰まると脳梗塞を引き起こしてしまいます。このようなメカニズムでの脳梗塞は、心原性脳梗塞と呼ばれており、健常者の5倍以上のリスクで発症すると言われています。

主なリスク要因

心房細動は加齢とともに増える病気で、男性は60歳代、女性は70歳代から急激に患者が増加していきます。発生する主な要因は、以下のとおりです。

  • 肥満
  • 高血圧
  • アルコール多飲
  • 糖尿病
  • 甲状腺機能亢進症 など

心房細動と睡眠時無呼吸症候群

不整脈非薬物治療ガイドライン(2018年改訂版)では、要因のひとつとして睡眠時無呼吸症候群を挙げており、治療や生活習慣の改善によって解決が出来た場合には心房細動が消失する可能性を示唆しています。

睡眠時無呼吸症候群が心房細動を引き起こすメカニズムとしては、睡眠時に無呼吸になることで体内の酸素不足が引き起こされ、心房に過度なストレスが掛かることで心房が拡大したり、筋肉が繊維化したりすることで心房細動に至るというものです。

最新の疫学研究では、心房細動の患者に睡眠時無呼吸症候群を併発する頻度は21 ~ 74%と高く※7、日本での心房細動に対するカテーテルアブレーション(経皮的心筋焼灼術)を受ける患者を対象とした研究では、AHI (無呼吸低呼吸指数)が5以上で88.6%、15 以上で53.3%と高確率で睡眠時無呼吸症候群を合併しています※8

一方、睡眠時無呼吸症候群の患者は、健常者より1.7倍心房細動を合併し、重症例ほどその比率は高くなるとされています※9。CPAP治療をすると、睡眠時無呼吸症候群の治療をしない患者と比較して心房細動の再発率は30%減少し、睡眠時無呼吸症候群を罹患していない人と同程度になるとされます※10

日常的なチェックと必要に応じて受診を

このように睡眠時無呼吸症候群の患者では心房細動のリスクを識別し、生活習慣の改善をはかる必要があります。また、心房細動の患者では睡眠時無呼吸症候群の検査が重要です※11

睡眠時無呼吸症候群は、本サイトで簡易セルフチェックを行うことが出来ます。実施してみて、もしくは普段から心当たりのある方は医療機関への受診をおすすめします。お住まいの近くにある医療機関は、こちらから検索することが出来ます。

関連リンク
睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは
簡単セルフチェック
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  • *1 Inoue, Hiroshi et al. “Prevalence of atrial fibrillation in the general population of Japan: an analysis based on periodic health examination.” International journal of cardiology vol. 137,2 (2009): 102-7.
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  • *3 Wolf, P A et al. “Atrial fibrillation as an independent risk factor for stroke: the Framingham Study.” Stroke vol. 22,8 (1991): 983-8.
  • *4 日本循環器学会/日本不整脈心電学会.不整脈非薬物治療ガイドライン(2018年改訂版).
    https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2018/07/JCS2018_kurita_nogami.pdf 2024年2月閲覧
  • *5 Goudis CA et al, Int J cardiol. 2017 Mar 1 ;230 :293-300
  • *6 Albuquerque, Felipe N et al. “Sleep-disordered breathing and excessive daytime sleepiness in patients with atrial fibrillation.” Chest vol. 141,4 (2012): 967-973.
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  • *8 Tanaka N, Tanaka K, Hirao Y, et al. Home Sleep Apnea Test to “Screen Patients With Atrial Fibrillation for Sleep Apnea Prior to” Catheter Ablation. Circ J 2021; 85: 252-260.
  • *9 Zhang D, Ma Y, Xu J, et al. Association between obstructive sleep apnea (OSA) and atrial fibrillation(AF): a dose-response meta-analysis. Medicine (Baltimore).2022;101:e29443.
  • *10 Li X, Zhou X, Xu X, et al. Effects of continuous positive airway pressure “treatment in obstructive sleep apnea patients with” atrial fibrillation. A meta-analysis. Medicine 2021;100:e25438.
  • *11 2023年に改訂された循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン https://www.j-circ.or.jp>2023/03>JCS2023_kasai
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